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犬を食べる中国人・鯨を食べる日本人

中国南部に「犬肉祭り」と言われる祭りがあります。毎年、夏至の時期に合わせて開催されるお祭りで、この日だけで約1万匹の犬が食べられるそうです。日本には、犬の肉を食べる習慣はありません。したがって、犬を食べる、と聞くと、すごく野蛮で残酷な行為であるように思われがちです。この中国のお祭りにも全世界から中止を求める声が殺到しているそうですが、でも、当の中国人にとっては毎日の食習慣であり、ごく当たり前のことなのですね。

日本人は鯨やイルカを食べます。ずっと昔から受け継がれてきた日本の食文化の一つです。この日本人が鯨やイルカを食べるということに対しても、世界の多くの国々から中止を求める声が上がっています。 「なに勝手なこと言うてるんや! これは日本の食文化や。なんで牛や豚を食べるのはよくて、鯨はあかんのや!」 というのが多くの日本人の声でしょう。私自身も長い間ずっとそう考えてきました。でも、最近少しずつ考えが変わってきました。私自身は、中国の人たちが犬を食べるということを聞いて、すごく不快な気分になり、嫌悪感すら感じてしまうのです。これって、もしかしたら、鯨を食べる日本人に対して外国の人たちが感じている感情と同じなのではないだろうか? と最近思い始めました。自国の食文化だから周りの者たちにとやかく言われる筋合いはない、ということは理屈ではよくわかるのですが、理屈ではなく、感情的にはなかなか納得できないのです。

それぞれの国々の文化を尊重し、それぞれの価値を認め合うことが必要だということはよく分かりますし、当然のことだと思います。ただ、2つの異なる文化が衝突して、折り合いをつけなければならないということも当然起こってきます。今日のようにグローバル化が進んでくるとなおさらです。

以前、あるテレビ番組で、フランス人の夫を持つ日本人女性のことが放映されていました。夫であるそのフランスの方は、家事を良くこなし、毎日の食器洗いを担当してくれているのですが、ときどき茶碗を洗うスポンジで、そのまま台所の床も拭いてしまうことがあるのだと、その奥さんが困惑されていました。一般に西洋人は、日本人ほど細かなことにはこだわらない人が多く、こういうこともよくあるように思います。昔、私の家によく出入りしていたスコットランドの方も、食器洗いをした後に、泡の付いた食器をほとんど水洗いせずにそのまま乾燥棚に入れていたことがよくありました。スコットランドでは当たり前なのですね。

先ほどの夫婦の場合、これから先も夫婦生活をうまく続けていくためには、夫が妻の気持ちを考えて、食器洗いのスポンジを床拭きには使わないと約束するか、または妻が我慢するかどちらかしかないでしょう。それぞれの価値観を押しつけ合っていては夫婦生活が成り立ちません。

食文化の違いについても同様のことが言えるのではないでしょうか。どとらか一方が不快に感じることがあるのなら、それぞれの言い分を主張するだけではなく、できるだけ双方が歩み寄れるような方策を考えることも、これからのグローバル化社会を生き抜いていくためには避けて通れないのではないかと思うのです。鯨で生計を立てておられる方もいるでしょう。そう簡単に鯨を食べることをやめるわけにはいかないこともよく分かります。私自身も鯨肉は大好きです。でも、他国の人たちとうまくやっていくための障害となるのであれば、それほど鯨食にこだわる必要もないのではないか、とも思うのですね…。

さて、皆さんはどう思われますでしょうか?

平成27年7月8日

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最終更新日:2016510