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ゲシュタルト崩壊

下の漢字をじっと見つめてください。

護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護護

何か変な感じがしませんか?

同じ漢字を何度も何度も繰り返し書いていたり、ずっと長く見続けたりしていると、だんだんその漢字の形が分からなくなってきて、正確に書けなくなってしまう、というような経験をしたことはありませんか? 私はよくあるのです。こんなことになるのは、何か自分の精神状態に欠陥があるのではないか、とずっと心配していましたが、先日そのことを娘に話すと、「お父さん、それってゲシュタルト崩壊って言うんやで。」という返事。「なんでこんな変な言葉知ってるんや。」と思いながら辞書を繰ると、「ゲシュタルト崩壊 文字や図形などをちらっと見たとき、それが何の文字であるか、何の図形であるかを一瞬で判断できるのに、これを持続的に注視し続けることで、全体的な形態の印象、認知が低下してしまう知覚現象のこと。認知心理学の分野の用語である。この現象は最初、失認症の症例として報告されたが、のちに健常な人間にも同様な現象が起こることが確認された。」と書かれておりました。そうなんや、だれにでも起こりうる心理現象だったんだ、と少し安心した次第です。よかった…。

似たようなことで、こんな経験もあります。田辺市に和歌山県教育センター学びの丘という県の施設があります。年に何回か、この施設で研修を受ける機会があり、いつも自家用車で出かけています。阪和自動車道を利用するのですが、皆様もご存じのように、途中いくつもの長いトンネルを通過します。特に下津ICと有田ICを結ぶ長峰トンネルは、下りが4,047mもあります。この長いトンネルを通過しているときに、ときどき呼吸が変になることがあるのです。変になる、というのは、自分が呼吸している、その呼吸の回数が多いのか、少ないのか、あるいは適正なのかと考えてしまい、そんなことを考えているうちに、息苦しくなってきて、意識がなくなってしまうのではないかという恐怖感に襲われるのです。

ずっとこのことが気になっていましたが、ある日インターネットで、「呼吸、 意識する」で検索をしてみますと、あるわ、あるわ。似たような経験をされた方がたくさんおられ、「呼吸を意識し出すと、息苦しさが襲ってきます。」というような相談がどっさり寄せられているのです。同じようなことを感じている人が他にもいたんだなあ、と、これまたひと安心。

実は呼吸というのは、本来無意識のうちに行われるものです。もちろん意識的に呼吸を速くしたり、遅くしたりできますが、何も意識しなくても息を吸ったり吐いたりする動作が自然に行われるように人間の体はできているのです。そうでなければ、意識のない睡眠中は呼吸できないということになってしまいます。それを変に意識すると、不安になり、適正な呼吸回数以上に呼吸をして、いわゆる過呼吸の状態になってしまうのだそうです。人間の心と体のバランスというのは本当に微妙なものですね。でも、このことを知ってからは、長いトンネル内でも息が苦しくなるというようなことはほとんどなくなりました。

自分自身の心理現象を科学的な視点で眺められる、ということは、自分の精神状態をコントロールするための大きな武器になりえます。たまには、ゆっくり自分の心と体に向き合って、インターネットや書物の助けなど借りながら、科学的に分析してみてはいかがでしょうか。

平成27年6月26日

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最終更新日:2016510